浅草本法寺

地下鉄銀座線田原町駅に近い浅草寿町に日蓮宗の寺院、本法寺がある。ご覧のようにここの外塀には噺家、講釈師、色物芸人をはじめ席亭、放送メディア等の寄席関係者多数の名が朱で刻されていて、眺めているだけで昭和三十年代から四十年代を中心に寄席で人気を博した人々の姿が彷彿としてなつかしい気持になる。
いつ外塀に意匠が凝らされたのかわからないがトップに桂文楽、つぎに古今亭志ん生が来ているところから判断して昭和三十年代のはじめ「黒門町の師匠」が落語協会会長の任にあった時期のことだっただろう。
寺内には「はなし塚」がある。太平洋戦争開始直前の昭和十六年、噺家たちは公序良俗に反する落語、戦意高揚に悪影響を及ぼす落語五十三席を禁演落語として封印し、ここに葬った。