雑司ヶ谷界隈

某日。池袋の新文芸坐で「首」と「女のなかにいる他人」を観た。小林桂樹主演作品の追悼上映で、ことし二0一二年は故人の三回忌にあたる。
映画のあとのビールが愛しくて映画館へは夕方から夜にかけて足をはこぶことが多いけれど、この日は例外で初回上映から観て、あとに予定もないので遅い昼食をとってから雑司ヶ谷へ向かった。
繁華街から十分ほどあるいたところに雑司ヶ谷というしっとりと落ち着きのあるエリアがあるのは貴重だとあらためて思う。鬼子母神も昔に変わらぬたたずまいを見せている。
二00八年に亡くなった市川準監督「東京兄妹」は哀切感とノスタルジーが心に沁みる秀作だが、その魅力のひとつに、この上なく美しく撮影された、緒形直人と栗田麗の兄妹が住む雑司ヶ谷界隈の光景がある。未見の方はぜひ御覧あれ。きっとこの町への小さな旅をしてみたくなりますよ。