黄葉の根津神社


そのうちにと思っているうちにひと月ほど経ってしまったが十一月十五日は七五三。根津神社にも子供の成長を祝ってたくさんの親子が詣でていた。季節は公孫樹の黄葉のときと重なる。
通りがかりに見たかぎりでは子供たちの服装は洋服が多いようだ。
画家の桂ユキ子 (1913-1991)に、大正九年七歳のとき母親に手を引かれてこの神社にお祝いに来たときの回想がある。
母親の趣味で、当時東京でいちばんモダンとされた店で作った洋服はシックな色調で、子供らしい派手な色はひとつも使わず、それが最先端だったとか。普段着に洋服を着た子供は珍しくはなかったものの洋服の晴れ着姿はまれで、その場には彼女のほかにいなかった。目立ってしまい、ほかの子供から「イジンさんが来た」と騒がれ、ハイカラ好みの母親にはそれが得意のようだったが、当の本人は不満で、おまいりもそこそこに母をせきたてて家に帰ったという。
わたしは歴史の襞にあるこのような文章を読むのが好きだ。