ハンガリー、オーストリア、チェコの旅


ハンガリーブダペスト)、オーストリア(ウィーン、ハルシュタットザルツブルク)、チェコ(チェスキー・クロムロフ、プラハ)を廻って帰国しました。一週間足らずのあいだの欲張った三カ国周遊旅行が走り走りの名所旧跡訪問となるのはやむを得ませんけれど(中国語の「走馬看花」です)、はじめての中欧の旅は嬉しく、また多くの刺激をもたらしてくれました。
歴史的には神聖ローマ帝国の中枢部だったこの地域には王権、教皇権の威容を誇った建築物が多くありますが、いまでは歴史遺産が人々の生活に美しさと潤いをもたらしているように見えました。歴史と風土が形づくった風景は見事な「作品」のようであり、眼を瞠らされました。
近現代史のなかで三カ国は地理的に近いドイツやソ連により翻弄、蹂躙されたという点で共通しています。第二次大戦後でいえば、オーストリア永世中立国となりましたが、ハンガリーチェコソ連社会主義と一線を画そうとした民主化運動がソ連により弾圧された経緯があります。春江一也『プラハの春』によれば、一九六八年のソ連軍によるチェコ・スロバキア占領については、アメリカは黙殺することでベトナム戦争の取引材料にしています。大国のエゴに振り回された小国の悲劇を象徴するのが「ハンガリー動乱」におけるナジであり、「プラハの春」におけるドプチェクの二人の政治家でした。
ところでこの地域を舞台とした映画といえば「会議は踊る」や「第三の男」(ウィーン)、「サウンド・オブ・ミュージック」(ザルツブルク)、「存在の耐えられない軽さ」(プラハ)等が思いあわされます。映画の性格は異なっていても国際政治の陰影を強く帯びているのはおなじです。今回の旅はこれら名作群の舞台の訪問でもあり、もちろん心躍る体験となりました。
疲れはありますが、早く体力、気力を回復させて旅行記事を書いておきたいと考えています。きょうのところは取り急ぎのご報告です。


写真はプラハの街で買った複製の小品絵画。ヴルタヴァ川(モルダウ川)に架かるカレル橋を行く女性の後ろ姿と石畳の水たまりに映る赤い影のゆらぎが素敵です。