清水観音堂

美しいお嬢さんが茶ぶくさを落としたのを、さる大店の若旦那が拾って渡したところ、お嬢さんは短冊に「瀬を早み岩にせかるる滝川の」と歌の上の句を書いて去って行った。下の句は「われても末にあはむとぞ思ふ」。夫婦の契りを歌った崇徳院の恋歌だ。
寝ついてしまった若旦那の医者の見立ては気の病い。出入りの職人で気の合う熊五郎が訊けば、病の因は崇徳院の歌のお嬢さんだ。さあ、それからお嬢さん捜しがはじまるが、いっぽうお嬢さんも床についていて、この家でも若旦那捜しで大わらわだ。ごぞんじ「崇徳院」の一席。
恋やつれの若旦那が、上野のきよみずさまへお詣りしたあと、そばの茶店で出会ったんだよと語ると熊五郎が「清水さんてェのは高台にあるから見晴らしがいいんですよ。あっしも好きだよ、あすこァ。ねえ。ちょいと下見るってェと弁天様の池がツウーッとあってね」と応じる。(『志ん朝の落語』)