ローマとパリで映画をおもう(其ノ四)

ルーブル美術館前にあるジャンヌ・ダーク像。イングリッド・バーグマンが熱望して演じたジャンヌ・ダークですが映画は未見。機会がなかったということもありますが、なんとかしてビデオを探してみようというほどには食指が動かないんです。

それよりも「カサブランカ」のボギーのリックとバーグマンのイルザはパリのどこに住んで、どこでデートしていたのだろう、なんてことが気になっていました。
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威容を誇るベルサイユ宮殿。フランス人男性のガイドさんの説明が上手でわかりやすく、ありがたかった。場所柄もあるのでしょうが、革命派によるマリー・アントワネットへの悪意あるうわさ話の捏造にも言及するなど、フランス革命の意義は認めつつ、人道面での問題点についてもしっかり語っていました。フランスの歴史教科書の記述はどうなっているか興味を持ちました。
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ベルサイユの庭園。一見、おっ、これは「去年、マリエンバートで」の庭じゃないか、なんて思わず口走ったものですから、周囲の失笑を買ったかもしれません。アラン・レネのこの傑作はドイツのニンフェンブルク城でロケされていて、庭園もここで撮られています。
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「去年、マリエンバートで」のニンフェンブルク城もベルサイユもどちらも見事な幾何学模様のフランス式庭園。ベルサイユの庭を散歩しているとヨーロッパの雰囲気ここにありといった気分になりました。
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ツアー最後の夜はモンマルトルの丘にあるムーランルージュで過ごしました。

シャンゼリゼ通りのリドにも行ってみたかったので、どちらにしょうかすこし悩みました。はいっ、余事はともかくこの種の問題についてわたしけっこう律儀に考える人なんです。でもジャン・ルノワール監督「フレンチ・カンカン」、ジョン・ヒューストン監督「赤い風車」、ニコール・キッドマンの「ムーラン・ルージュ」とくれば、リドは次回にするほかありません。ムーランルージュを後回しにしたりすると映画の神様に叱られちゃいそうです。
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上の写真は「フレンチ・カンカン」のセット。ジャン・ギャバンとフランソワ・アルヌール主演のこの映画は十九世紀末のムーラン・ルージュ創業当時を描いています。当時とは異なり、いまのダンサーはトップレスで踊る場面が多く、くわえて日本風にいう寄席の色物、フレンチ・カンカン、華やかなフィナーレというのが舞台構成。わたしたちは男二人、女四人のグループでしたが、トップレスのショーは美しく気品あるものでしたので、女性にも違和感はなく、たのしく眺めていました。ディナーを含めると四時間ほど、しばし別世界に遊んでいるみたいでした。飲み物は六人に三本のシャンパン。結婚式でせいぜいグラス一杯を口にするくらいで、一人でハーフボトルを飲むなんてはじめてでしたので、けっこう利きました。「ローマの休日」のアン王女とはちがってシャンパンはわたしにはまったくの非日常のお酒ですから、まさに「パリの休日」。こうして帰国前夜はシャンパンとムーランルージュの舞台で更けてゆきました。