遅船庵筆記

新コロ漫筆~勇気、希望、絆

東京オリンピック1964のときは中学三年生だった。日紡貝塚大松監督と東洋の魔女、体操個人女子総合金メダリストのチャスラフスカ、マラソンのアベベ、円谷たちの姿はその気になればいまでも瞼に浮ぶ。教室では先生が「ソ連の重量挙げの選手たちは食パンとお…

新コロ漫筆〜池江璃花子選手のこと

五月十一日までだった緊急事態宣言が月末まで延長されることとなった。 すると五月十七日に予定されていたIOCバッハ会長の日本訪問が緊急事態宣言の延長を受けて延期されるとの報道があった。なんだか今回の緊急事態宣言の日切をとりあえず五月十一日とした…

新コロ漫筆〜狂歌をよむ

永井荷風が大田南畝について書いた随筆や論稿を読んでいるうち、荷風経由ではなく直截南畝を読んでみたくなり、 いま『大田南畝全集』の狂歌の巻を読んでいる。素人なので自己流の解釈は避けられず、それに気がかりな新型コロナウイルスに引きつけて読んだり…

新コロ漫筆〜オリパラの夢

三代目桂三木助が得意とした噺のひとつに「三井の大黒」があった。 左甚五郎に大黒様を彫ってもらった三井家の使いが、「まえには阿波の雲慶先生に恵比寿様を彫っていただき、『商いは濡れ手であわのひとつかみ』という句をいただきました。つきましては先生…

新コロ漫筆〜ワクチン異聞

欧米から遅れること二か月、日本でも二月から新型コロナワクチンの接種がはじまった。順番としてまず医師や看護師などの医療従事者、次に高齢者や基礎疾患を有する人、そうしてエッセンシャル・ワーカーと呼ばれる勤労者がつづく。いまこれを書いている四月…

新コロ漫筆〜平平山人のこと

厚生労働省の職員が三月二十四日に銀座で二十三人が参加する大宴会を開いていたことが発覚した。三月二十一日に新型コロナウイルスに伴う緊急事態宣言は解除されたが政府は解除後も大人数での飲食や歓送迎会を控えることを国民に呼び掛けていて、その本丸の…

新コロ漫筆~医者寒からず・・・

江戸時代の医学書の多くは漢文で書かれていたから、医師志望者は漢文の素養を高めるために四書五経など儒学の古典を学んでいて、医学と儒学は隣り合わせていた。 漢文の医学書といっても内容はすべて東洋医学ではなく、なかには漢訳された西洋の医学書が清国…

新コロ漫筆~動けば損

晩唐の詩人李商隠は引越しが大好きで、そのため貧乏を通したと聞く。官僚政治家だったが賄賂とかは取らなかったのだろう。 ことわざに「動けば損」という。男女の仲やマネーゲームにも適用されているがどちらともご縁のない老爺としてはズバリ転居、旅行を戒…

十年目の三一一に小沢信男氏を悼む

元禄十一年(一六九八年)八月、隅田川に長さ百十間(約二百メートル)の大橋が架けられ、永代橋と名付けられた。場所は深川の渡しがあったところでいまの橋よりも百メートルほど上流にあった。 「つく田島つくづく月をながむればかたぶく秋の長きよのはし」…

新コロ漫筆~「行蔵は我に存す」

反共タカ派のニクソン大統領はベトナム戦争に終止符を打ち、中国と国交を結び、消費税反対だった村山富市首相は税率引き上げを認め、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会会長森喜朗氏はわが国を神の国と讃える超のつく国威発揚論者だが二月三日の日…

新コロ漫筆〜余録

ことし二0二一年一月十八日に召集された通常国会では新型コロナ感染症対策とともに総務省の幹部職員と、利害関係者にあたる東北新社に勤める菅首相の長男たちとの会席が大きな問題となっていて、放送事業の許認可権を持つ総務省にたいし、東北新社側が接待…

新コロ漫筆~「必ずやる」

新型コロナウイルスの第三波が猛威をふるうなか、七月二十三日から予定されている東京オリンピック・パラリンピックの開催をめぐる議論が熱を帯びてきた。世論調査では国民の八割以上が中止もしくは再延期の意向だから風当たりが強くなってきたといってよい…

新コロ漫筆~「お答えを差し控える」

先日のテレビのニュースの一場面、医療提供体制の不備を謝罪する菅首相に「そんな答弁だから言葉が伝わらないんですよ。そんなメッセージだから国民に危機感が伝わらないんですよ」と蓮舫参議院議員が語気を強めたのに対し首相は「少々失礼じゃないでしょう…

新コロ漫筆~会食

一月八日、政府は東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県を対象に緊急事態宣言を再発令した。 新型コロナ対策のまずさで各社世論調査での内閣支持率は急落していて、 再発令に追い込まれた感は否めない。菅首相はこんなはずはないと思っているかもしれないが、こ…

新コロ漫筆~感染症につけ入る隙

嫌いなものと問われてすぐに思い浮かぶのは健康診断で、在職中はやむなく法律で定める最低限の健診は受けたものの、胃検診や宿泊付きの詳しい検査には見向きもしなかった。症状がないのに胃にバリウムやカメラを入れられてはたまらない。 自覚症状がない限り…

新コロ漫筆~不要不急

在職中から隠居志向が強く、退職後は受忍できる貧乏であれば甘受して自由な時間を過ごしたいと願っていた。おかげさまで定年退職してからこれまでのおよそ十年を無職渡世一筋、安穏に過ごすことができた。 定年後再就職する人に較べるとわたしのようなタイプ…

マッカーシズムとトランピズム

一九五0年代のアメリカ合衆国はアメリカがいちばんアメリカらしかった時代だったとの見方がある。第二次世界大戦に勝利し、ヨーロッパ、アジアと異なり悲惨な戦場とはならず、戦後は政治、軍事、経済、文化いずれも世界トップの位置を占め、安定と繁栄がも…

断捨離

若いときからずいぶん本を買ったがこの数年で多くを処分した。『斎藤茂吉全集』『久保田万太郎全集』ほか数人の方々の全集、著作集や『千夜一夜物語』『カサノヴァ回想録』など、それに二十世紀文学の金字塔とあこがれ、いつか読破したいと願っていたジェイ…

流言録

昭和十七年の暮れのある日、甲州街道で一台のトラックと荷馬車が衝突し、トラックに積んであった荷物が路上に落ち、なかにあった四個の米俵のうちひとつが破れ白米が散乱した。 通りかかった巡査がそれを見て運転手を尋問したところ運転手は悪びれないどころ…

江戸の百均

『浮世風呂』『浮世床』などの滑稽本で知られる式亭三馬に文化七年から翌八年五月までの日記を兼ねた『式亭雑記』という随筆があり、冒頭に、なんでも三十八文という店のはなしがある。 「去年の歳暮より此春へかけて、三十八文見せといふ商人大いに行はれり…

日本学術会議とベーシックインカム

日本学術会議が推薦した百五名のうち六名の任命を拒否した菅内閣は説明責任を果たさないまま学術会議の改革の問題に論点をずらそうとしているようだ。 学術会議の改革は必要だとしても特定の学者や考え方を狙い撃ちするのは自由主義国家の根幹に関わる問題で…

命なりけり・・・

七月に10キロヴァーチャルマラソンを走りました。緊急事態宣言で中断していた毎月の催しがようやく再開して、この日の走りが宣言からあとわたしのはじめてのレースとなりました。 六時から十二時のあいだに各自が定めたコースをGPS付アプリで計測して送付し…

ヒトラー、チャーチル、新型コロナ対策

イギリス陸軍の軍人で政治家としても知られたバーナード・モントゴメリーが「私は酒もタバコもやらないから百パーセント健康だ」といったところウインストン・チャーチルは「私は酒もタバコもどちらもやるから二百パーセント健康だ」と応じた。 「私があなた…

合ハイ、合コン

昨年モンテーニュ『エセー』を読み、来年はフランス・ルネサンス関連でフランソワ・ラブレー『ガルガンチュアとパンタグリュエル』に挑戦しようと決めた。年が明け新型コロナ感染症、緊急事態宣言とたいへんな波が押し寄せはや半年以上が過ぎ、のんびり構え…

麻生太郎氏における民度の研究

六月四日の参院財政金融委員会で麻生副総理兼財務大臣が日本の新型コロナウイルスによる死者数が欧米諸国より少ない理由を「国民の民度のレベルが違う」と述べたと報じられている。 札幌医科大の調査によると、四日時点の人口百万人当たりの死者数は、日本は…

浮雲の思い

東日本大震災のときもそうだったが現在の新型コロナウイルス感染症禍においても、わたしがすぐに 手にしたのは『方丈記』だった。自身にとって天変地異について思い、考えるテキストとしてこれ以上の書はなく、今回何度目かの通読ではとりわけ「浮雲の思ひ」…

時代と訓辞

新型コロナ感染症が拡大するなか新しい年度がはじまった。本来なら企業、官庁では新たにくわわるメンバーが一堂に会し、トップから辞令が交付され、訓辞で新人としての心得が説かれるのが、この春はネットで訓辞が配信されたり、セクション別に辞令の交付だ…

東京五輪延期狂想曲

東京五輪について国際オリンピック委員会(IOC)、日本側ともに予定通りの開催を繰り返し強調していたのに、各国オリンピック委員会や競技団体、選手から延期を求める声の噴出をうけて急遽三月二十四日、一年程度の延期と決まった。 三日前の三月二十一日、…

不要不急の外出を控える日をまえに

危機管理の要諦ははじめにドーンと大きく厳しい網をかけて、改善したところから緩めることにある。小池東京都知事はこの週末二十八日と二十九日に不要不急の外出を控えるよう都民に要請した。大きく厳しい網である。 次が個々の問題で、わたしのばあいだと日…

東京五輪と歴史の教訓

東京オリンピックは予定通りの開催に向けてしっかり準備をする。IOCバッハ会長や東京五輪大会組織委員会森会長、安倍首相、小池東京都知事からはそうした発言しか聞こえてこない。感染症が収まり七月二十四日に開会式を迎えられればそれに越したことはない。…