2022-06-01から1ヶ月間の記事一覧

「仁義なき戦い」雑記帖(其ノ二)~NHKへの疑問

映画の公開四十年を期して二0一三年に発売された「仁義なき戦い Blu-ray Box」が手許にある。これには本篇全五部作にくわえ特典として「総集編」と「“仁義なき戦い”を作った男たち」が収められている。後者は深作欣二、笠原和夫両氏の没後二00三年五月三…

「三姉妹」

第一感、脚本が光っていました。特筆すべきは姉妹三人のキャラクター造形で、次女役のムン・ソリが脚本に感銘を受け、共同プロデュースを買って出たというのも納得です。三人の人物像を具体化したキム・ソニョン(長女)、ムン・ソリ、チャン・ユンジュ(三…

「仁義なき戦い」雑記帖(其ノ一)~広島埠頭での思い出

「仁義なき戦い」の公開は一九七三年(昭和四十八年)一月十三日だからはやいもので半世紀近くが過ぎた。 大学卒業を前にしたころ、ある友人が興奮気味に「詰めた小指の先がどこかへ飛んで、見るとニワトリが嘴で突っついて大笑い」と話すのを聞き、さっそく…

昔も今も

ジョン・スタインベック『怒りの葡萄』は一九三0年代末に発生した干ばつと砂嵐をきっかけに農業の機械化を進める資本家たちと、土地を追われカリフォルニアに移っていった貧困農民層との対立を素材とした小説で、三0年代アメリカ文学の屈指の作品が刊行さ…

「牛泥棒」

五月二十日にNHKBSPで「牛泥棒」の放送があり、十年ほど前にレンタルショップで借りて以来の再会ができました。 太平洋戦争のさなか一九四三年の作品でわが国では劇場公開されていません。わたしがこの作品を知ったのは若き日のクリント・イーストウッドが感…

水色の季節に

暇も退屈も好きだから國分功一郎『暇と退屈の倫理学』はまえから気になっていて、さきごろ新潮文庫に入ったのでさっそく手にした。評判通りおもしろく、哲学者、思想家がこんなに暇と退屈を論じていたのかと驚いた。 佐藤春夫に名著『退屈読本』がある。著者…