2020-07-01から1ヶ月間の記事一覧

「最後の曲り角」についてのノート〜コリンヌ・リュシェール断章(其ノ六)

ジェームズ・M・ケイン『郵便配達は二度ベルを鳴らす』は一九三四年に出版されて以降、一説によるとこれまで七回映画化されたそうだが、なかでわたしが知っているのは以下の四作品だ。 1 一九三九年ピェール・シュナール監督、フェルナン・グラベ、コリンヌ…

「格子なき牢獄」〜コリンヌ・リュシェール断章(其ノ五)        

わたしがはじめて「格子なき牢獄」をみたのはNHK教育テレビ「世界名画劇場」での放送だった。おそらく一九七七年一月に遠藤周作がゲスト出演したときの番組だったと思われるが、遠藤周作と吉田喜重が対談していた記憶はまったくないからあるいは別の日の…

戦時の若者たちとコリンヌ〜コリンヌ・リュシェール断章(其ノ四)

第二次世界大戦後、コリンヌ・リュシェールとナチスとのかかわりは日本にも伝えられた。ところがフランスやアメリカとはちがってこの国では忌まわしい女優とはならなかった、少なくとも忌まわしさの一色には染まらなかった。 『コリンヌはなぜ死んだか』にあ…

「ナチの高級売春婦」の実像~コリンヌ・リュシェール断章(其ノ三)

「嘗て、その美しさと特権によって、ドイツ占領者たちに讃美され、喝采をあびてきたフランス女優ーナチの高級売春婦・カリン・ルチア(コリンヌ・リュシェールの英語読み)は(中略)いまや“国家侮辱犯”として、判決を受けることとなった」 「一九三九年、彼…

「忌まわしい女優」の生涯~コリンヌ・リュシェール断章(其ノ二)

コリンヌ・リュシェールの生涯について「別冊太陽・フランス女優」(平凡社、1986年)をもとにたどってみる。 一九二一年二月十一日パリで生まれる。中等教育を三年で止め、俳優、映画監督のレイモン・ルーローから演技を学び、十六歳で舞台にデビューした。…

「紀元二千六百年の美貌はコリンヌ・リュシェールから!」〜コリンヌ・リュシェール断章(其ノ一)

一九三八年にフランスで製作されヒットした映画「格子なき牢獄」が日本で公開されたのは翌三九年十二月だった。この作品はわが国でもヒットし、主演の新人女優コリンヌ・リュシェールにたいする注目が社会現象となるほどの広がりをみせた。 詩人の堀口大學は…