2020-02-01から1ヶ月間の記事一覧

マスクへの視線

吉村昭『海の葬礼』の森山栄之助、『黒船』の堀達之助はともに幕府の英語通詞であるとともに英語の先達として英和辞書の作成、編集にたずさわった。現物は未見だけれど、二人の人物像からまじめと愚直がしみわたった辞書だろうと想像している。 一昨年だった…

「グッドライアー 偽りのゲーム」

ともにつれあいを亡くしたという高齢者の男女がインターネットを通じて知り合う。一見すると男は一癖も二癖もありそうな胡散くさい老爺、女は世間知らずで無垢な老女だ。さいしょのイメージどおり男が仲間を率いて詐欺を働いているのは早々にあきらかになる…

武漢の医師の死

中国が新型肺炎を公表するまえからメッセージアプリ「微信(ウィーチャット)」を通じて危険性を訴えていたのに「デマ」として公安当局に処分された武漢市中心医院の眼科医師李文亮さんがみずからも新型コロナウイルスに罹り二月七日未明に亡くなったという…

「ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密」

ニューヨーク郊外の館でベストセラー作家にして巨大出版社のオーナー、ハーラン・スロンビーの八十五歳の誕生日が祝われ、翌朝、ハーランが書斎で喉を切り裂かれて死んでいるのが見つかった。警察は自殺と考えていたが、そこへ私立探偵のブノワ・ブランが匿…

「マイ・フーリッシュ・ハート」~チェット・ベイカーの最期

「チェット・ベイカー・シングス」、わたしの男性ジャズボーカルのワン・オブ・ザ・ベストのディスクだ。端正で、ちょっと中性的というか妖しい雰囲気を漂わせたジャケットを含めて。 一九五0年代にトランペット奏者、そしてボーカリストとしてジャズシーン…