2019-07-01から1ヶ月間の記事一覧

旅のあとに

全巻を読むまえにその精髄を知っておきたくモンテーニュ『エセー抄』(宮下志朗訳、みすず書房)を読み、予想していた以上の魅力を覚えた。これで『エセー』に取り組む条件は整った。 『エセー抄』を読み終えてビル・エヴァンス「Explorations」を聴いた。先…

「さらば愛しきアウトロー」

冒頭のキャプションには、ほとんど実話を素材にしているとあったけれど、それよりも、よくできた大人のメルヘンとして楽しく鑑賞しました。 フォレスト・タッカーは一九八0年代初頭からアメリカ各地で銀行強盗を繰り返したうえ逮捕と脱獄を十数回重ねた筋金…

「COLD WAR あの歌、2つの心」

二三か月前に映画館でもらった「COLD WAR あの歌、2つの心」のチラシに、ポーランドのモノクロ作品とあるのをみて、すぐに買い!を決めた。予断と偏見といわれれば甘受しよう。しかしわたしのなかにあるポーランドのモノクロ作品はハズレのない優れもの揃い…

「新聞記者」余話

映画「新聞記者」は大学新設計画を所管する文部科学省を跳び越して内閣府、首相官邸が情報を伏せながら積極的に推進している某医療系大学の新設計画に端を発している。本来は情報を開示して進めるものだが、ここでは官邸主導で極秘に行われている。 公開性を…

「新聞記者」

むかし、ウォーターゲート事件を扱った「大統領の陰謀」をみて、権力に遠慮、迎合しないアメリカ映画界の強さに感心した。近くは、米国における聖職者による性的虐待を扱った「スポットライト」や、9・11後のアメリカをイラク戦争へと導いたとされるディック…

戊辰戦争の弾痕

わたしのアガサ・クリスティー攻略作戦、今月は霜月蒼氏がクリスティーの総決算と讃える『終わりなき夜に生まれつく』だ。 貧しい青年ロジャーズは呪いの噂のある「ジプシーが丘」に建つ廃屋に魅せられる。散策するうちに美しい娘エリーと知り合い、恋仲にな…