2018-06-01から1ヶ月間の記事一覧

『第三帝国の興亡』を読む

ウィリアム・シャイラー『第三帝国の興亡』(松浦怜訳、東京創元社)全五巻のうち一九三九年八月三十一日のところまでを読んだ。ここが本書の中間点にあたる。そして翌日ドイツはポーランドに侵攻し、第二次世界大戦が始まった。 この本はそれから二十年のち…

「空飛ぶタイヤ」

走行中の運送会社のトラックから突然タイヤが外れて、歩道を幼子といっしょにあるいていた主婦に当たり、死亡させてしまう。車輛を製造したホープ自動車の調査で事故を起こしたトラックは整備不良とされ、運送会社は激しい非難にさらされるとともに倒産の危…

『脇役本』

濱田研吾『脇役本』(ちくま文庫)は映画、テレビで知る懐かしいバイプレーヤーたちの本やエピソードを満載したエッセイ集だ。とりあげられているのは山形勲から吉田義夫までおよそ八十人のシブい役者たち。わたしには多くが写真を見なくても目次だけで顔が…

『15時17分、パリ行き』

クリント・イーストウッド監督の新作「15時17分、パリ行き」をめずらしく同名の原作本を読んだあとで鑑賞した。 原作は、二0一五年八月二十一日、十五時十七分にアムステルダム駅を出発し、パリに向かっていた列車内で、武装したイスラム過激派の男が企てた…

「芸者ワルツ」

「四谷赤坂麹町チョロチョロ流れるお茶の水、粋な姉ちゃん立ち小便」はフーテンの寅さんの啖呵売として知られるが、明治末期から大正期にかけての公衆便所は男女ではなく大小の別でつくられていて、女性もときに朝顔便器に背を向けておしっこをしていて、こ…

「ファントム・スレッド」

優れた映画は多義的な解読を積極的に受け入れる。「仁義なき戦い」がアクション映画としても喜劇映画としても優れていたように。そして「ファントム・スレッド」はサスペンス映画としても、(奇妙な)愛の映画としてもまことに充実したものだった。公開、即…