2018-04-01から1ヶ月間の記事一覧

「清明時節雨紛紛」

「十八歳の頃、僕は十九世紀ヨーロッパの古典を読んでいました。主にトルストイ、ドストエフスキー、チェーホフ、バルザック、フロベール、ディケンズです。彼らは僕のヒーローでした」。村上春樹が「書くことは、ちょうど、目覚めながら夢見るようなもの」…

トポグラフィー・オブ・テラー博物館で

ゲシュタポ本部の遺構のまえに建つのがトポグラフィー・オブ・テラー博物館だ。テロの地勢図の博物館にはナチの恐怖政治の爪痕を示す写真やパネルが掲示され、その横にドイツ語と英語の解説文が添えられている。三枚の写真は同館で撮ったもので、これだけで…

お花見の午後

いささか遅れながらの記事となるが三月の終りの一日、江戸川公園へお花見に行くのにあわせて伝通院や播磨坂の桜もたのしもうと欲張って歩いた。昼食のあと根津の自宅から弥生坂、春日を通って伝通院へ、そのとちゅう善光寺坂というなつかしいたたずまいの坂…

ゲシュタポ本部跡

長年「ニューズウィーク」誌にあって国際報道に従事したアンドリュー・ナゴルスキの著書『ヒトラーランド』(北村京子訳、作品社、訳書は2014年、原著は2012年刊)は副題に「ナチの台頭を目撃した人々」とあるように、ジャーナリストを主とする在独アメリカ…

猫の恋、亀の声

桜の開花が待たれるころ猫は恋の季節を迎える。猫が交尾する時期は年に四回あるそうだが、いちばん盛んなのは早春で、発情した雄は昼夜を問わず鳴き声もかまびすしく雌を追い求め、雄どうしの争いの激しいばあいは武闘が起こる。こうして「猫の恋」は春の季…

ドイツ連邦議会議事堂前で

一九三三年二月二十七日夜、ワイマール共和国の国会議事堂が炎上し、事件はヒトラーが独裁権力を掌中にする重要な契機となった。 炎上した議事堂が完全に修復されたのは一九九九年、東西ドイツの統一によりベルリンに首都機能が戻され、かつての議事堂が連邦…

「ラッキー」

ハリー・ディーン・スタントンが「パリ、テキサス」で主役を務めたのは五十八歳のときだった。個性派俳優の記念碑的作品となったこの映画から三十余年、かれは「ラッキー」を遺作として二0一七年九月十五日、老衰のため九十一歳で亡くなった。 遺作はスタン…

アドロン・ホテル

ベルリンのブランデンブルク門のすぐそばにあるアドロン・ホテルは『第三帝国の興亡』の著者ウィリアム・シャイラーや『ヒトラーに会った!』のドロシー・トンプソン(夫はノーベル賞作家のシンクレア・ルイス)といった1930年代在独米国人ジャーナリストの定…

「排除の論理」余話

昨年の衆議院議員選挙に際して朝日新聞が「安保法今は昔」の見出しとともに民進党から希望の党へ転じた何人かの議員をとりあげていた。 集団的自衛権を認める、自衛隊の活動範囲や使用できる武器を拡大するといった内容を盛り込んだ通称、平和安全法制整備法…

鶯歌(2015初夏台湾 其ノ二十九)

今回の旅で最後に訪れた鶯歌陶瓷老街はしっとりとした、のどかで、素朴なところだった。台北駅から鉄道で三十分ほどしかかからず、三峡老街にも近い。 台湾の陶器はほとんどこの地で作られている。日本の○○焼というのと違って鶯歌焼といったブランドがあるわ…

「ちはやふる−結び−」

「ちはやふる−上の句−」「ちはやふる−下の句−」で瑞沢高校競技かるた部の一年生だった綾瀬千早(広瀬すず)が三年生になってスクリーンに帰ってきた。おなじく進級した真島太一(野村周平)、綿谷新(新田真剣佑)、大江奏(上白石萌音)たちとともに。 千早…

三峡清水厳祖師廟(2015初夏台湾 其ノ二十八)

三峡老街の入口付近にある三峡清水厳祖師廟。彫刻の美しい廟で「東方芸術の殿堂」「台湾彫刻の至宝」といった呼び名がある。欄干の透かし彫りをはじめ細密な彫刻が見事だ。といっても気どったふうはまったくなくて、地元の方と見える人たちが気軽に参詣して…