2017-01-01から1年間の記事一覧

「和田誠と日本のイラストレーション」

たばこと塩の博物館で「和田誠と日本のイラストレーション」(9/9〜10/22)が催されている。和田さんは「ハイライト」のパッケージデザイナーだからご縁のある会場だ。 九月二十一日はさわやかな秋空で、自宅の根津から上野へ出て、浅草そうして隅田川を渡り…

「September Song」

ことし二0一七年八月の東京は月はじめから半月以上にわたり曇り一時雨といった天気が続いた。猛暑はどこへ行ったのやら、ずいぶんと日照時間の少ないまま九月になった。 異例の夏だったけれど九月を迎える気分に変わりはなく、いつものように「セプテンバー…

故宮博物院(2015初夏台湾 其ノ二)

台北市北部士林地区にある国立故宮博物院には中華民国政府が台湾へ撤退する際に北京の故宮博物院から精選して運び出された文物が展示されている。残念ながら写真は不許可だったが、眺めていると精選しただけあって北京の故宮の美術品よりも総じて質が高いよ…

「三度目の殺人」

とくにジャンルにこだわっているのではないけれど、ここではミステリーのファンとして讃えたい。 「三度目の殺人」はミステリー映画史上の傑作である、と。 解雇された工場の社長を殺害したうえ死体を焼却した容疑で起訴された男がいる。三隅(役所広司)と…

カンペイ(2015初夏台湾 其ノ一)

成田空港から台北桃園空港へ。はじめての台湾だ。中国語圏の旅となれば十年ほどまえに香港、澳門、広州を訪れて以来となる。旅程は三泊四日で故宮博物院、忠烈祠、中正記念堂など台北市内観光と淡水、十份、九份、基隆、野柳、三峡、鶯歌などを廻ることとし…

「新感染 ファイナルエクスプレス」

ゾンビものには食指が動かない。腐った死体が歩き回るなんてバッチイし、お金と時間をかける気が起こらない。ところが韓国映画「新感染 ファイナルエクスプレス」の評判がたいへんよくて、さすがのわたしもそうはいっていられず新宿の映画館へ足を運んだ。結…

タイ風ラーメン(2017夏タイ其ノ十三)

タイ料理は中国、カンボジア、マレーシア、ラオス、ミャンマーなどの周辺諸国の影響を受け、香辛料、香味野菜、ハーブを多用し、辛味、酸味、甘味などを多彩に組み合わせた味付けに特徴があると説明されている。(Wikipedia参照) といってもわたしがかろう…

「ハクソー・リッジ」

少年時代、煉瓦で兄をひどく殴打した経験から「汝、殺すなかれ」を信念として従軍した男は、戦後多くの人命を救った功績により非武装兵士としてはじめて名誉勲章を受章した。 メル・ギブソン十年ぶりの監督作品はこの男の体験に即したもので、同監督がどうし…

タイ古典舞踊(2017夏タイ 其ノ十二)

古典舞踊、ニューハーフショー、ムエタイ(いわゆるキックボクシング)がタイの三大エンターテインメントなのだそうだ。旅の最後の夜はディナーショーで古典舞踊をたのしんだ。かつては宮廷でのみ披露されていた伝統の舞は神聖でいてきらびやか、民族楽器の…

「ハイドリヒを撃て!」

プラハでナチス高官ラインハルト・ハイドリヒの暗殺事件があったのは一九四二年五月二十七日のことだった。ハイドリヒは親衛隊大将またベーメン・メーレン保護領(チェコ)総督代理そして「ユダヤ人問題の最終的解決」の実質的な推進者で、その冷酷さから「…

大寝釈迦仏(2017夏タイ 其ノ十一)

王室の南隣に建つワット・ポーはバンコク最古の寺院、また最大の敷地をもつ王室寺院。十四世紀のアユタヤ朝時代に創建され、シャム国王ラーマ一世と三世がそれぞれ十数年かけて大改修を行った。 境内仏堂内には有名な寝釈迦仏があって、細長い堂内いっぱいに…

断捨離

幕末、薩摩藩が贋金を鋳造していたのはよく知られており、一説によるとその額は二百九十万両にものぼったとか。薩摩藩と縁の深い佐土原藩も倒幕のための贋金づくりに精を出していた。 佐土原藩については岩井克人『ヴェニスの商人の資本論』にある「ホンモノ…

王宮(2017夏 タイ其ノ十)

バンコク発祥の地とされる王宮周辺にはワット・プラケーオ、ワット・ポーといったタイで最も格式の高い王室寺院が建つ。24万4千平方メートルの広大な敷地に豪華絢爛な建物、独特な色使いのタイル、ユニークな仏像など、さすがこの国最高の観光スポットの名に…

「I'll be seeing you」 余話

ウィリアム・ジンサー『イージー・トゥ・リメンバー アメリカン・ポピュラー・ソングの黄金時代』という本がある。先年、国書刊行会から関根光宏氏の訳で上梓された。(WilliamZinsser『EASY TO REMEMBER The Great American Songwriters and Their songs』…

珈琲(2017夏タイ 其ノ九)

このところ自分用のおみやげとしてよくご当地のTシャツとスターバックスのタンブラーを買って帰る。どちらも実用的かつ思い出の品となってくれている。写真はバンコクで入ったスターバックスの店内で、風景はいずこもおなじ。パソコンもアップル社製を使って…

「I'll be seeing you」と「港が見える丘」

第二次世界大戦当時のアメリカのラヴソングに「I'll be seeing you」(さようなら、また会いましょう)という曲がある。 一九三八年に発表されたときはありきたりのバラードとして注目されずヒットもしなかったが、戦争になり遠い戦場にいる恋人を思い、再会…

タクシー(2017夏タイ 其ノ八)

バンコクのホテルから繁華街へタクシーで向かっていると、運転手さんからタブロイド判の新聞紙を渡され、日除けにしてちょうだいというのでご指示に従った。ご覧のように運転席のほうも日除けをしてあるのだが法規上、大丈夫なのだろうか。 ホテルで呼んでも…

「夜明けの祈り」

アウシュビッツ収容所をはじめポーランドの強制収容所の多くはソ連軍により接収され、囚人たちは解放された。そのいっぽうでは統制の保てない兵士による蛮行が頻発した。スターリンはポーランドにたいし領土の野心を隠さなかったから、そのことも影響してい…

「20センチュリー・ウーマン」

一九七九年のサンタバーバラを舞台として描かれた母と息子とその周囲にいる人々のひと夏の経験。 マイク・ミルズ監督は前作「人生はビギナーズ」で七十五歳でゲイであることを告白した父親を、今回は自由で独立心旺盛な母親をモデルとした。ともに自伝的要素…

ライトアップのアユタヤ遺跡(2017夏タイ 其ノ七)

バンコクを中心とする地域は六月から十月までは雨季だが、さいわい今回の旅行では一度だけホテルに着く直前に軽度のスコールとおぼしき雨に遭った以外は傘の必用はなく天候にめぐまれた。自認はしていないけれど友人によってはわたしは晴れ男だそうだ。 アユ…

『武士道の精神史』

「分別らしきもの腰ぬけべし」「武辺は無分別とそこつ(粗忽)の間より出る」 天野長重という旗本が書いた教訓的備忘録『思忠志集』の寛文八年(一六六八年)の記事にある、かつて武勲を立てた老人が語った言葉だそうで、氏家幹人『江戸藩邸物語』で知った。…

象の飼育場で(2017夏タイ 其ノ六)

日本列島がユーラシア大陸と陸続きだったころ、日本にもナウマン象がいたそうだ。遠い昔に絶滅したが、そのあと文献上、象が日本へ初渡来したのは応永十五年六月二十二日(一四0八年七月十五日)のことで、東南アジア方面からの南蛮船により、足利義持への…

「うたたねの枕の上」と「をりをりの美景」

ことしの憲法記念日、安倍首相は憲法改正に向けてのアクセルをこれまでにも増して強く踏み込んだ。第九条に三項を付けるとか言っていたが、そのまえに仮名遣いの問題がありはしないか。日本国憲法は歴史的仮名遣いで書かれているから整合性をたもつには新た…

象乗り(2017夏タイ 其ノ五)

アユタヤ観光の核となっているのが歴史公園ともうひとつ象乗りである。象はタイのシンボル、王様から庶民に至るすべてを守ってくれる特別な存在なのだ。 象に乗るのはたしか三百バーツだったから日本円だと九百円。乗ったかって?それが同行の家族が乗るのを…

「ヒトラーへの285枚の葉書」

一九四0年六月、ベルリンはフランスへの勝利に沸き返っていた。とはいえ戦争だから勝者にも犠牲者は出る。陶酔と喧噪のなか職工のオットー(ブレンダン・グリーン)と妻アンナ(エマ・トンプソン)のもとに最愛の息子ハンスが戦死したとの報せが届く。 訃報…

ワット・プラシーサンペット(2017夏タイ 其ノ四)

ワット・プラシーサンペットはアユタヤの王の遺骨を納めた三本の塔を含む仏教施設を指す。 アユタヤ王朝の創設は十四世紀半ばだから、歴史公園にある建造物の多くは比較的新しいものだが、十八世紀に滅亡した際の攻撃でいまは煉瓦のみを残すものが多い。その…

「ボンジュール、アン」

映画プロデューサーのマイケル(アレック・ボールドウィン)は仕事ばかりで家庭には無頓着、妻アン(ダイアン・レイン)は娘の大学進学を機に子育て後の新しいライフステージのありかたを模索している。そうした折り、彼女はひょんなことからマイケルの仕事…

アユタヤ歴史公園(2017夏タイ 其ノ三)

アユタヤ王朝はいまのタイの中部アユタヤを中心に展開したタイ族による王朝で、一三五一年にラーマーティボーディー一世が創設した。 アユタヤは流れの穏やかなチャオプラヤー川に沿っていて、貿易には格好の立地条件を有していた。じじつ、中国、日本、琉球…

「こんな人たち」

七月二日に行われた都議会議員選挙の前日、秋葉原駅前で行われた自民党の街頭演説会で、演説している安倍首相に聴衆のなかから「辞めろ」「帰れ」のヤジと罵声がわき上がったとの報道があった。 それにたいし首相は「人の演説を邪魔するような行為を自民党は…

屋台(2017夏タイ 其ノ二)

昨2016年10月13日プーミポン・アドゥンラヤデート国王が崩御したとき、タイ国民が追悼する姿をニュースで見て、ずいぶん慕われていた王様だと思った。タイへ来てみるとホテルや高速道路の入口など随所に同国王の遺影が掲げられていた。 やんごとない方面は別…