2016-09-01から1ヶ月間の記事一覧

『鶉衣』を読む

昨年のラグビー・ワールドカップのベスト4は南半球勢が占めた。その四強ニュージーランド、オーストラリア、南アフリカ、アルゼンチンによるラグビー・チャンピオンシップで、アルゼンチンが南アに26-24で勝った。ホーム&アウエー方式で一週間前のアウエー…

スペイン広場(西班牙と葡萄牙 其ノ三十八)

一九二九年セビリアでイベロ・アメリカ博覧会が催された。従来の商品見本市ではなく文化的な催しもくわえた総合博覧会は当時としては斬新な企画だった。イベロ・アメリカはアメリカ州でかつてスペインとポルトガルの植民地だった国々及びイベリア半島のスペ…

「アスファルト」

フランスのとある街の郊外にあるおんぼろ団地。灰色の空のもとぽつねんと建つ灰色がかった箱状の建物には時代から取り残された雰囲気がただよう。 サミュエル・ベンシェトリ監督「アスファルト」はこの団地を舞台とする三つの出会いが描かれた群像劇、オムニ…

アルカサル(西班牙と葡萄牙 其ノ三十七)

アルカサルと呼ばれるセビリアの宮殿は勝利の広場(プラサ・デル・トゥリウンフォ)を挟んで大聖堂と向き合っている。十四世紀後半カスティリア王国ペドロ一世がムーア人の建築家を呼び集め、ムデハル様式というスペイン独自の建築様式で建てた王宮である。…

朝永振一郎の「基本、休講です」

一九六五年にノーベル物理学賞を受賞した朝永振一郎は東京教育大(現筑波大)の教授で、一時期は学長を務めていたが授業はほとんどせず、年度はじめに事務方が、朝永先生の授業は基本、休講です、開講するときは張り紙を出しますからよく掲示板を見ていてく…

セビリア(西班牙と葡萄牙 其ノ三十六)

グアダルキビール川沿いに位置するセビリアへは大西洋から船舶が遡航できる。この条件に着目したのがジェノヴァの商人たちで、ここを拠点とするかれらの積極的な商業活動が中世より港湾都市として栄えさせた。歴史的に培われた経済力の象徴が威容を誇る大聖…

「イングリッド・バーグマン 愛に生きた女優」

好きな女優の三人を選ぶのはむつかしいが映画と女優の組み合わせベストスリーとなると「カサブランカ」のイングリッド・バーグマン、「東京物語」の原節子、「バンドワゴン」のシド・チャリシーを挙げる。 「イングリッド・バーグマン 愛に生きた女優」は娘…

世界一小さな闘牛場(西班牙と葡萄牙 其ノ三十五)

スペインの闘牛は日本の相撲にあたるとどなたかがおっしゃっていた。国技にして宗教性を帯びていて、スポーツというだけでは割り切れないと言われると、なるほどと思えてくる。 スペインには五百を超える常設闘牛場があり、なかで一九00年に設けられたミハ…

『フランス組曲』

イレーヌ・ネミロフスキー『フランス組曲』(野崎歓、平岡敦訳、白水社)、第一部では一九四0年六月ナチスによるパリ占領にともない同市を脱出する人々の姿がアラカルトふうに描かれ、続く第二部では占領の具体のありさまが起伏に富んだ物語として綴られて…

絵になる町(西班牙と葡萄牙 其ノ三十四)

ミハスは絵になる町だ。主たる産業は観光で、個性的な個人商店が軒を連ねていてのぞいているうちに購買意欲が高まってくる。 ネットでは「美しい街並みのミハス!可愛らしいお土産がゲットできるお店五選」といった記事があり、カラフルな陶器、体にやさしい…

「イレブン・ミニッツ」

ポーランド、ワルシャワのいま。ここで暮らす十一人と一匹の犬のある日の午後五時から同十一分までのあいだの姿がアラカルトふうに描かれ、それぞれのエピソードはジグゾーパズルの小片(ピース)を思わせる。 それらがしかるべきところへ嵌められたときどの…

「アンダルシアの小さな宝石」(西班牙と葡萄牙 其ノ三十三)

ネット上で、ミハスについての記事を見ているうちに、ある旅行社のホームページに「アンダルシアの小さな宝石」という紹介記事があった。「アンダルシアの宝石」アルハンブラ宮殿と対比して「小さな宝石」としたのだろう。ミハスはこの語感にぴったりの町だ…