2016-07-01から1ヶ月間の記事一覧

雨の日のジャズボーカル

雨の午後。先日ずいぶんと骨組の強い折り畳み傘を買ったが、これの初お目見えで上野のスターバックスへ向かい、テーブルについたところでダウンロードしておいたSue Raney のアルバムSongs For A Raney Dayを聴いた。雨にご縁のあるスタンダードナンバー十二…

ナスル朝(西班牙と葡萄牙 其ノ二十六)

アルハンブラはアラビア語で赤い城砦を意味している。由来は諸説あるがアルハンブラ宮殿増築の際に夜を通してかがり火を燃やして工事したためグラナダ平野から見上げた宮殿が赤く染まって見えたことからという説が有力だそうだ。 広い宮殿の壁や天井は精緻な…

ロマノフ家の秘宝

この五月にサンクトペテルブルクとモスクワで見たロマノフ王朝の金銀財宝や美術品はとてつもなく豪華なものだった。 五時間かけて見学したエルミタージュ美術館はエカチェリーナ二世(1729-1796)の専用美術品展示室に発していて、後代のロマノフ家やロシア…

アルハンブラの哀愁(西班牙と葡萄牙 其ノ二十五)

イベリア半島では長くキリスト教徒とイスラム教徒との対立が続いた。八世紀はじめに全域がイスラム圏となりコルドバを都とする後ウマイヤ朝が栄えたが、十一世紀のはじめにはキリスト教徒によるレコンキスタ(国土回復運動)が本格化し、十三世紀中葉になる…

「シング・ストリート 未来へのうた」

ジョン・クローリー監督「ブルックリン」は一九五0年代はじめアイルランドの小さな町からニューヨークへ渡り、ブルックリンで生活をはじめたエイリッシュという若い女性の物語で、彼女の渡米はほとんどのアイルランド人と同様に貧困と将来の生活不安による…

アルハンブラ宮殿(西班牙と葡萄牙 其ノ二十四)

中学生のころギターの名曲「アルハンブラの思い出」を聴いてアルハンブラという宮殿がスペインにあるのを知った。おそらくNHKFMでのアンドレ・セゴビアの演奏だったと思う。スペインの作曲家で、クラシック・ギターの名手フランシスコ・タレガの作品だが、後…

神経蕪雑

ある歌手が、CDで聞いてもらう前提で音作りをしているので、mp3に圧縮してしまうと自分の聞いてもらいたい音じゃなくなってしまうと言っていて、それを読んでからというものiPodで音楽を聴くとき、大好きなこの曲も本当はもっといい音なんじゃないかと思うよ…

「ラ・マンチャの男」(西班牙と葡萄牙 其ノ二十三)

いまの日本で「ドン・キホーテ」と聞くと大型ディスカウントショップのことかと思う人が多いかもしれない。小説の名前にちなんで社名をつけた理由を同社は「ドン・キホーテは行動理想主義者であるが故に様々な悲喜劇を展開しますが、既成の常識や権威に屈し…

「日本でいちばん悪いやつら」

ネタバレにご注意ください。 この映画は違法捜査や裏金づくり、警察組織のどろどろした人間関係など社会派の要素に富むいっぽう、主人公の綾野剛演ずる北海道警諸星洋一刑事に焦点を当てると、およそ四半世紀にわたる成長と挫折の年代記となる。そして「凶悪…

風車の土産物店で(西班牙と葡萄牙 其ノ二十二)

ラ・マンチャ地方はスペインの中部、イベリア半島の台地に位置する、東西およそ300km、南北およそ180kmに延びる広範な地域で、ブドウ、オリーブ、サフランの栽培地として知られる。十六世紀になり穀物を引くための風車が設けられたのは平原に吹く風を利用す…

「ブルックリン」

若い男女がデートで映画館へ行く。「雨に唄えば」を観たあと公園を散歩しているうち男は街燈に手をかけ、さきほど雨中で歌い踊っていたジーン・ケリーをまねる。男が女をはじめて家族に紹介したとき、食卓の話題は野球になった。男はドジャースの大ファン、…

ラ・マンチャ(西班牙と葡萄牙 其ノ二十一)

ラ・マンチャ地方のコンスエグラの丘には十一基の風車が並んでいる。コンスエグラは人口一万ほどの小さな町だが、ここの風車はミゲル・デ・セルバンテスの著したドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャの物語といっしょになって世界中から観光客を呼び寄せる。 訪…