2015-06-01から1ヶ月間の記事一覧

冷のコップ酒  

寝床にiPadを持ち込みYouTubeで「愛より愛へ」を観た。一九三八年(昭和十三年)に公開された松竹大船作品、監督は島津保次郎。 佐野周二と高杉早苗のカップルは男のほうの親の許しが得られないので家を出て同棲中だ。男は作家志望で女は女給勤めをしている…

「ヨーロッパの場末」(モロッコの旅 其ノ七)

ある日、モロッコの現地のガイドさんがエト邦枝の歌った「カスバの女」を流してくれた。アルジェリア、チュニジア、モロッコを歌詞に配した日本の流行歌は若い人たちに意外な感をもたらしていた。この曲は多くの歌手が歌っているが、エト邦枝のオリジナル・…

「海街diary」

早いもので一九八四年に「お葬式」が公開されて三十年以上が経つ。そのころ読んだ批評のなかに、現代に小津調を巧みに活かした作品と論じたものがあったのを「海街diary」を観ているうちに思い出した。 ありきたりな表現なのかもしれない、それに小津調とい…

フェズの迷路(モロッコの旅 其ノ六)

写真は皮なめし職人の工場から撮ったフェズの旧市街。 モロッコ最初のイスラム王朝の都フェズは世界一複雑な迷路の街と言われていて、入り組んだ路地をあるくうちになるほどおそるべきところだと実感した。ヴェネツィアの路地もずいぶんと複雑だったが、それ…

「誘拐の掟」

ローレンス・ブロックのマット・スカダーシリーズは五、六冊を読むばかりで、それもずいぶんご無沙汰している。これでハードボイルドファンを称するのはおこがましいかもしれないけれど、ひとえにレイモンド・チャンドラーに偏した結果であって、大本のとこ…

「カスバの女」(モロッコの旅 其ノ五)

エト邦枝が歌う「カスバの女」(作詞:大高ひさを、作曲:久我山明)のレコードが発売されたのは1955年(昭和30 年)のことだったが、当時この名曲はさほど話題にならず、十二年後1967年に緑川アコがリバイバルヒットさせ、これでオリジナルを歌ったエト邦枝…

モロッコへのまなざし(モロッコの旅 其ノ四)

1931年(昭和六年)わが国ではじめて日本語字幕の付いた映画が公開され、大ヒットした。ジョゼフ・フォン・スタンバーグ監督、マレーネ・ディートリッヒ、ゲーリー・クーパー主演「モロッコ」である。広大な砂漠、灼熱の太陽、フランス外人部隊に参加した好…

モロッコのハエ(モロッコの旅 其ノ三)

ネットにあるモロッコ旅行の記事を読んでいると「morocco desu」というブログに、ハエとか気にする人は、ここへは本気で来ないほうがいいとあった。モロッコではよくハエを見た。といってもせいぜい数匹なので大群などと誤解なさいませんように。マラケシュ…

「ブラックハット」

香港で原子力発電所がメルトダウン寸前になり、シカゴで大豆の先物取引価格が高騰して市場が混乱に陥る。いずれもハッカーの遠隔操作によるもので、これを承けてFBIと中国当局の共同捜査が行われることとなる。 中国側の責任者チェン・ダーワイ(ワン・リー…

カサブランカの空港で(モロッコの旅 其ノ二)

カサブランカでの入国手続きにはむやみに時間がかかった。係官不在のためか閉じられた窓口が二三あり、そのうえわたしたちが並ぶ列では係官と客との言い争いが生じ、くわえて車いすの方や乳幼児を連れた方の優先措置(当然のことであり、これをとやかく言っ…

『ルビッチ・タッチ』

エルンスト・ルビッチ監督「陽気な中尉さん」(一九三一年)で、ミリアム・ホプキンスの令嬢が婚約者(モーリス・シュバリエ)を「あの人には軍服がほんとによく似合ってほれぼれする」と自慢すると、当の婚約者の愛人クローデット・コルベールが「でも、パ…

日本橋へ

二0一四年三月日本橋の「COREDO室町」にオープンしたシネマコンプレックスは自宅から歩いて行かれるところなのでけっこう重宝している。まずは不忍池へ出て、湯島、秋葉原、御茶ノ水そうして神田駅西口商店街を通りJR神田駅へ、その西口から南口へ抜けて今…