2015-02-01から1ヶ月間の記事一覧

佐々木譲第二次世界大戦秘話三部作との再会

録画しておいた「シャーロック・ホームズの冒険」と「シャーロック・ホームズの華麗な挑戦」を観た。久しぶりの前者ビリー・ワイルダー作品は本来四時間超の作品として企画され撮影も出来ていたのに二時間に短縮されたいわくつきのもので、カットされた部分…

「フォックスキャッチャー」

義太夫を語るのが唯一の趣味という大家の旦那だがあまりにも下手なので、店子は誰も聞きに来ない。せめてご馳走をしてご機嫌をとろうと準備をしてもだめ。ならば店の使用人に聞かせようとするがみんな仮病を使って出てこない。おなじみ「寝床」の一席である…

牧野伸顕『回顧録』を読む

一九四六年(昭和二十一年)春、牧野伸顕は孫で作家の吉田健一、その友人で文芸評論家の中村光夫、吉田の従兄である伊集院清三を相手として回想談をはじめた。企画は志賀直哉の強い勧めによるものだった。回想談は一九四九年一月二十五日牧野が八十七歳で歿…

ドルマバフチェ宮殿(土耳古の旅 其ノ四十三)

ドルマバフチェ宮殿はヨーロッパから採り入れたバロック様式と伝統のオスマン様式が折衷された豪華な宮殿で、1843年に着工され1856年に完成、1922年にオスマン帝国最後の皇帝メフメト6世が退去するまでトプカプ宮殿にかわる帝国の王宮として利用された。現在…

「おみおくりの作法」

長く記憶に残っている映画があれば、反対にさっそく忘れてしまっている映画がある。どちらがよいというものではなく、思い出したくもない記憶もあるし、眼を凝らし、手に汗握ったあとはきれいさっぱり何にも残っていないのは爽やかなもので、なかなかよい気…

ボスフォラス海峡クルーズ(土耳古の旅 其ノ四十二)

いよいよボスフォラス海峡のクルージングに出発だ。船内ではチャイを飲んだりヨーグルトを食べたりしながら風景をたのしんだ。 南北に細長いこの海峡の幅は最も広い地点で3700m、最も狭い地点でわずか800mほど。北に黒海、南にマルマラ海があり、マルマラ海…

「トレヴィの泉で二度目の恋を」

シャーリー・マクレーンはまことに愛らしく、クリストファー・プラマーはすこぶるかっこいい。年輪がしっかり刻まれた魅力であり、名優たちの歳月がこの映画の彩りを豊かに、そして味わいを深くしている。 妻を亡くした堅物の老人フレッドが娘の勧めたアパー…

ホテルの絵画(土耳古の旅 其ノ四十一)

ホテルに掛けてあった絵画。ヨーロッパとアジアにまたがるイスタンブールの街、そのあいだによこたわる海。これぞトルコの人にとって自慢の風景であろう。絵を見ているとそんな気がしてくる。素晴らしい風景を眺めながらトルコ料理を口にする人生の幸福。絵…

「薄氷の殺人」

1999年中国華北の地方都市でひとりの男の死体がいくつかの町にまたがる十数箇所の石炭工場で発見される。この猟奇バラバラ死体事件が迷宮入りしたまま五年後の二00四年に類似の事件が起こる。二つの事件は互いに関連していると思われるが、具体の姿はわから…

グランドバザール(土耳古の旅 其ノ四十)

アンカラからイスタンブールへ戻るとグランドバザールが待っていた。十五世紀なかばメフメット二世により開設された大市場はまるでショッピングの迷宮、トルコ語では「カパル・チャルシュ」屋根のある市場と呼ばれている。 迷路のような道の両側に並ぶ貴金属…