2012-04-01から1ヶ月間の記事一覧

『ヒューマン・ファクター』

ジョン・ル・カレ『ティンカー・テイラー・ソルジャー・スパイ』が映画化された(邦題「裏切りのサーカス」)のをよい機会と三十余年ぶりにグレアム・グリーン『ヒューマン・ファクター』を新訳で再読した。(加賀山卓朗訳、ハヤカワepi文庫) どちらもイギ…

「裏切りのサーカス」

エリック・アンブラーの『あるスパイへの墓碑銘』や『ディミトリウスの棺』でイギリスのスパイ小説に入門してジョン・ル・カレの『寒い国から帰ってきたスパイ』でとりことなった。だからル・カレの『ティンカー・テイラー・ソルジャー・スパイ』の邦訳が出…

「アーティスト」

一九二七年のハリウッド。サイレント映画のスターであるジョージ・バレンタイン(ジャン・デュジャルダン)が大勢の観客からのアンコールに応えて何度も舞台に登場する。共演した女優(「雨に唄えば」のリナ・ラモントのそっくりさんと見えた)も舞台に出た…

浅草出遊

自宅から徒歩で上野経由、浅草へ。約束の十時よりすこし早く着いたので荷風ゆかりのレストランであるアリゾナの周囲をぶらついた。一九五九年(昭和三十四年)五月二日の永井荷風告別式の会葬者のなかには松本操アリゾナ主人の姿もあったことが秋葉太郎『考…

「スーパー・チューズデー 〜正義を売った日〜」

映画「スーパー・チューズデー 〜正義を売った日〜」は政治の一面が日米を問わず色と欲をめぐる争いであることを如実に示していました。もちろんこれは政治の世界だけの現象にとどまるものではないけれど、慎ましさや謙虚さはさておいてまずは「我こそは」と…

母語と母国語〜『サラの鍵』余話

『サラの鍵』にある著者タチアナ・ド・ロネの紹介には「1961年パリ郊外で生まれる。イギリスとフランス、ロシアの血を引く。パリとボストンで育ち、大学はイギリスのイースト・アングリア大学で英文学を学んだ。その後パリへ戻り、オークションハウス〈クリ…