2011-02-01から1ヶ月間の記事一覧

「踊子」

日本映画専門チャンネルで「踊子」を観た。永井荷風原作の未見の必見映画だったので、まことにうれしい。 舞台は浅草、路地裏にある六畳一間のアパートに山野(船越英二)と妻の花枝(淡島千景)が生活している。山野は小さなレビュー劇場のバイオリン弾き、…

瞬間日記抄(其ノ六)

銀座シネパトスで「女の中にいる他人」と「けものみち」を観る。昨年没した小林桂樹の追悼上映。会場の故人ゆかりの品のなかに昭和十六年に東宝を受けたときの不合格通知があった。東宝の計画部俳優募集係の通知書簡は候文でしたためられている。こうしたも…

『漂砂のうたう』

『茗荷谷の猫』につづく木内昇(きうち・のぼり)さんの新作となるとおのずと手は伸びる。『漂砂のうたう』集英社刊。本作は先日、直木賞を受賞した。 明治初期の根津遊廓を舞台とした歴史小説の一面はあるけれど、いっぽうでたいへんにミステリアスな小説で…

高峰秀子をめぐる二、三の妄想

一九二四年(大正13年)三月二十七日函館の平山錦司、イソ夫婦に長女が誕生する。三人の兄がいて四人目の子供だった。錦司の妹の志げが秀子と名付けた。 志げは十七歳のときに荻野市治という活弁士と駆け落ちし、新潟では高峰秀子の芸名で女活弁士となってい…